『運命の鎖に縛られようと』

 投稿者:てぃんくる



私の家系は、代々アマリリス家に仕えるメイド長を務める責務がある


その事を幼い頃から言い聞かせられ、その責務を果たす為に色々な事をスパルタ教育させられてきました。


ですが私にはなぜそういう家系に生まれただけでそんな責務を負わなくちゃならないのかとずっと疑問に思っていました。


でもその答えを見つけられずその疑問を心の奥底に仕舞い込んだまま先代であった母が亡くなり、私は最年少のメイド長に就くこととなりました。


掃除、料理、洗濯、大図書館の本を盗んだり、滞納させる者達の対処、そしてシャルロットお嬢様の護衛兼遊び相手………


メイド長の仕事は想像を遥かに超える忙しさで、自分の胸の中にある疑問への答えを見つける暇もありませんでした。


でも、シャルロットお嬢様が私と遊んでいる時に見せる笑顔を見ると無意識のうちに心の底から温かな気持ちになっていっていたんです。


もしかしたら同じように、家系に縛られているという境遇を持つお嬢様に何か思う所があったのかも知れません。


私はもうメイド長という立場になってしまった以上、この椅子から勝手に降りる事は許されない。後戻りは出来ない。でもせめてお嬢様は自分の意思で世界を見て、自分の道を自分の意思で決めて進んで欲しい。


その気持ちに気づき始めた頃、お嬢様が冒険者としてケビオスに向かうと言った。


お嬢様は流石に別の星に行ってしまえば見つかって連れ戻される事はないと思ったのでしょうが………。


宇宙中から集まる大図書館を利用する人たちの情報を管理し、滞納者たちの対処に当たるのが日常茶飯事。お嬢様が居なくなった事をご主人様たちが聞きつければ見つかるのは時間の問題………。


ならば、そうなる前に私が包み隠さず言ってしまえばいい。そしてお嬢様の行動を承認してもらえるように説得すればいい。


長時間の説得の末、なんとかお嬢様が冒険者になる事を認めて貰えた。ある一つの条件付きで。


その条件とは———


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ケビオスに着いた私は懐中時計を片手に進みケビオス冒険者ギルドの冒険者登録窓口のドアを叩く見慣れた後ろ姿を見つけ、一緒に入っていく。


「はじめまして、こちらはケビオス冒険者ギルド冒険者登録窓口です!冒険者登録手続きですね?」


「そうですわ!早速ですが登録申請用紙の用意をしてくださる?」


「はい、では、こちらに必要事項の記入をお願いしますね!あ、連れの方も登録手続きをするのであればこちらにどうぞ!」


「『連れの方』………?わたくしは1人で来ましたわよ?」


「あら?あなたが入ってきた時に一緒にうしろからメイドさんのような方が入ってきたのであなたと一緒に登録手続きに来たとかと思いました。」


「メイドさんのような方………?」


そして、今まで後ろ姿を向けていた所をようやく振り向き私と目を合わせる。それに合わせて私は笑顔を向ける。


「な、なっ、なんであなたがいるのよ!カメリア!」


予想通りの反応を向けたお嬢様に私は一礼し、こう返す。


「私は大図書館メイド長であり、あなたの親衛隊長です。常にあなたと共にある『運命』ですから。例え命に替えようともあなたをお守り致します………。」


例え私がこの先も家系という運命に縛られようと、私はお嬢様を守り抜き、支え続けてみせる。


そういう『運命』のもとに生まれてきたのだから………